ダニ媒介性脳炎とは
ダニ媒介性脳炎(tick-borne encephalitis)は、ダニ媒介性脳炎ウイルスを保有するマダニに咬まれることによって感染する疾患です
ダニ媒介性脳炎ウイルスは、フラビウイルス科オルソフラビウイルス属に分類されるウイルスです。ヒトへの主な感染経路はマダニに咬まれることですが、ヤギの生乳を飲むことによっても感染することがあります。
ダニ媒介性脳炎ウイルスを保有するマダニがいる地域でのレクリエーション(魚釣り、キャンプ、山菜取りなど)や仕事(林業、農業など)で野外活動する場合、マダニに咬まれて感染するリスクがあります。

厚生労働省検疫所 FORTHホームページ「ダニ媒介性脳炎(Tickborne encephalitis)」
https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/2010/0625_01.html(2024年7月閲覧)
頭痛、発熱、悪心、嘔吐
筋力低下、脊髄麻痺、運動失調症、意識障害、認知機能の変化(記憶力・集中力低下・気分変調)
ダニ媒介性脳炎の日本での発生状況
国内では、2024年8月までに北海道で7例のダニ媒介性脳炎症例が報告されています1-3)。北海道では、抗ダニ媒介性脳炎ウイルス抗体を保有する動物(過去にウイルスに感染した形跡がある動物)が広範な地域に生息していることが明らかになっていますので、特に注意が必要なリスク地域と言えるでしょう。
赤色
ダニ媒介性脳炎ウイルスが分離された(直近でウイルスに感染したことが確認された)症例または動物、あるいは抗ダニ媒介性脳炎ウイルス抗体保有動物(過去にウイルスに感染した形跡がある動物)が報告された都道府県4)


1)国立感染症研究所:ダニ媒介性脳炎とはhttps://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/434-tick-encephalitis-intro.html (2024年7月31日参照)
2)札幌市保健福祉局保健所感染症総合対策課「ダニ媒介脳炎患者(国内6例目)の発生について」(令和6年6月26日)https://www.city.sapporo.jp/hokenjo/f1kansen/documents/20240626_pressrelease.pdf( 2024年7月31日参照)より作図
3)函館市立箱館保健所.「ダニ媒介脳炎患者(国内7例目)の発生について」(令和6年7月3日) https://www.city.hakodate.hokkaido.jp/docs/2024020800073/file_contents/kohyo0703.pdf ( 2024年7月31日参照)より作図
4)Yoshii K. Chapter 12b TBE in Japan. The TBE Book. 6th ed. Global Health Press, 2023 より改変(ファイザー社の資金提供を受けて出版された)
5)好井健太朗. Neuroinfection 2020; 25: 23-29
ダニ媒介性脳炎の予防法について
野外では、腕・足・首など、肌の露出を少なくする1,2)
首にタオルを巻くか、ハイネックのシャツを着用する。
シャツの袖口は軍手や手袋の中に、シャツの裾はズボンの中に入れる。
ズボンの裾は、靴下をかぶせるか、長靴の中に入れる。
服は、明るい色のものを選ぶとマダニを目視で確認しやすい。
上記と組み合わせて忌避剤を使用する。

野外から戻ったら、屋内にマダニを持ち込まないようにする1)
上着や作業着は、家の中に持ち込まない。
シャワーや入浴で、マダニの付着がないか確認する。
ガムテープを使って衣服に付着したダニを除去する方法も有用。
ダニ媒介性脳炎予防のためのワクチン接種
予防法としては、リスクのある方に対する不活化ワクチン接種があります。
1) 国立感染症研究所: マダニ対策、今できること https://www.niid.go.jp/niid/ja/sfts/2287-ent/3964-madanitaisaku.html 2023/9/14参照
2) 厚生労働省: ダニ媒介感染症 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000164495.html 2023/9/14参照
3) 国立感染症研究所: ダニ媒介性脳炎とは https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/434-tick-encephalitis-intro.html 2023/9/14参照